最高裁判所第二小法廷 昭和40年(行ツ)72号 判決 1966年10月21日
上告人 岩田武志男
被上告人 国 外四名
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人野口一の上告理由について。
原判決(およびその引用にかかる第一審判決)の確定した事実によれば、第一審判決添付目録第一ないし第四記載の農地は、もと上告人の父五郎の所有であつたが、上告人が昭和一四年八月一六日父の死亡によりこれを家督相続したものであり、上告人は、本件農地買収処分前、同目録第三、第四記載の農地につき、地元農地委員会に対し右の旨を書面で明らかにしたことがある。ところで他方、登記簿上はいずれも父所有名義のままになつており、また、上告人の母かじは、夫の没後一家の世帯主となり、本件農地を他に賃貸してその賃料を受領し、農事実行組合に加入し、或いは、同目録第三記載の農地につき知事に解約承認の申請をしたり、本件農地と同時に樹立された他の農地の買収計画の一部に対し地元農地委員会に異議の申立をする等本件農地の所有者のように振舞つていた、というのである。
されば、右の事実関係の下において、かじを本件農地の所有者と誤認してなされた本件農地買収処分が違法でないとした原審の所論判断は、当裁判所の屡次の判例(昭和二八年二月一八日大法廷判決、民集七巻二号一五七頁、昭和三三年四月三〇日大法廷判決、民集一二巻六号九二七頁、昭和三六年三月七日第三小法廷判決、民集一五巻三号三八一頁、昭和三七年七月五日第一小法廷判決、民集一六巻七号一四三七頁参照)の趣旨に違背するものとはいえない。
それ故、論旨は、採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判官 奥野健一 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)
上告理由書<省略>